設計のプロとしてこの住宅建設業界にある多くの工務店や

ハウスメーカーの仕事を見ていると、

「こんなことしていいの!?

「これっておかしい!」と思うことばかり。

本当にこの世界でやっていて良いのだろうか?

自分も同じようなことをやっていると見られているのだろうか?

と、本気で悩んだこともありました。

私も住宅業界の世界に属している1人なので、あまり同業者や関係者の

悪口を言いたくはありません。

しかし、多くの工務店やメーカーは嘘を平気でお客様に言っている。

そして、その嘘のしわ寄せを、結局はお客様がかぶっている場面に出くわすと、

悲痛な気持ちになるのです。

工務店やハウスメーカーが言う嘘の代表的なものは以下の2つでしょう。

ハウスメーカーの嘘―自由設計?

ハウスメーカーは今やどこも“自由設計”をうたっています。

おそらくどのメーカーの営業担当者に聞いても「うちは自由設計です!」と

自信満々に答えるでしょう。

しかし、ハウスメーカーの言う自由は、自分達が決めた範囲内での自由です。

既成のプランが先にあり、それを少しだけ手を加えるだけです。

お客様の要望を聞いて最初からプランを自由に作るわけではありません。

お客様の多くは、自由設計という言葉をそのまま信じ

「自分達の要望に合わせた設計をしてくれる」と思います。

しかし、実際に出てくるプランはお客様の要望を無理矢理に

自分たちの都合に押し込めただけのものでしかなく、

そこで失望されてハウスメーカーに依頼されない方も多いのも事実です。

中には「大手だから大丈夫」と自分を納得させて家をつくられる方もいらっしゃいますが、

住めば住むほど「本当はこうしたかった」という気持ちがつのるばかり。

そんな時、友人達から「大手じゃなくてもちゃんとしたところに

頼めば本当の自由設計でやってくれるのに」と言われ怒りが爆発!

大げさではなく、本当にそういう方がいらっしゃるのです。

ハウスメーカーは同じような規格の家を沢山作るから技術のない人でも造れるのです。

だから、本当に自由な設計は望めません。

だからと言ってそれを知らずに自由設計という言葉に騙されるお客様がいても、

その人が悪いとは絶対言えません。

本当のことをちゃんと伝えないハウスメーカーの責任だと思います。

工務店の嘘 ―坪単価が安い?

時々、プランニングされようとするお客様から

「坪単価でどれほどの値段になりそうですか?」と聞かれることがあります。

おそらく他の工務店、特にFC展開しているようなローコスト系の工務店が出している

広告などをごらんになって坪単価を値段の目安に

考えられようとしているのだと察しますが

「50万~60万の間です」

と言うと、明らかに「高すぎる」という表情をされる方が結構いらっしゃいます。

確かに広告などで坪単価30万円前後の値段を出して“安くて良い家”をウリにしている

工務店は多いのですが、実はこのような工務店が出す坪単価には嘘があることを

ご存知の方は少ないでしょう。

通常、私達のような設計事務所が出す坪単価は、総工事費を延べ床面積で

割ったものをお出しします。工事全体にかかる金額を割ったものと

理解してくださって良いです。

しかし、工務店が広告で打つ坪単価は建築本体合計を施工床面積で割ったもので、

簡単に言えば、家本体を作るのにかかる費用以外のものを抜いた金額を割って

坪単価として表示しているのです。

例えば杭工事・エアコン工事・照明器具代金・屋外給排水などの費用を

抜いているので、安くなるのは当たり前です。

以前設計した総工事費1480万円、坪単価52万円の家の価格をもとに、

工務店と同じ算出方法で工務店基準の坪単価を出すと29.7万円という

数字が出たことがあります。

そのことをある工務店の経営者に話したところ

「数字の定義の違いじゃないか。別に嘘を言っているわけじゃない。

悔しかったら同じ定義で数字を出せばいいじゃないか」

「詐欺じゃないからね。きちんと建物本体の坪単価と書いているから!!」

と言われたことすらあります。

なんてこった…です。

安い坪単価で客引きをしているのです。

家つくりにかかる費用で本当に大事なのは、総額でいくらかかるか?です。

一部分でいくらかかるか?ではありません。

数字の定義を知らないことを良いことにお客さんを言いくるめて、

家が安く出来ると期待させながら、実際にかかる金額はそれほど安くない。

そして、だから満足出来る内容かと言えば、そういう工務店の設計は

やはり自分達の都合を優先するものばかり。使う建築素材も既製品ばかり。

そして美しいとは言えない。

お客様は素人ですから「プロに任せよう」と判断されても、実際に出来た家を見て

「思ったものと違う」と愕然とする。

そんな話は、この業界では日常茶飯事のように転がっています。

そして、「ここが思ったのと違うから直して」と言っても

「そこは契約後の変更になるので追加料金をいただきます」と言われる。

「それでいいのか!!」

それで良いとは絶対思えません。

しかし、こういうことが横行しているのが、今の住宅建設の世界なのも事実です。

もしかすると、ここで書いたことを「大げさな」と思われるかもしれません。

しかし、ある調査会社が行ったアンケートで、家を建てた人に

「もう一度家をたてるとしたら、現在の家を建てたメーカー、

工務店に建ててもらいますか?」という質問に

8割の人がNOと答えたという事実があります。

つまり、8割の人が自分達の家つくりに満足出来なかったということなのです。

そしてその人たちは今も我慢しながらその家で生活することを余儀なくされている。

その我慢は、私が子供の頃に経験した嫌な思いと重なる気がするのは、

私の感傷でしょうか?

いや、そうではないと思います。

家づくりは一生に一度の大仕事です。

だからこそ、家族全員が「こんな家に住みたい」と思う気持ちを大切にして家を作り、

建てた後も家の作りの悪さに我慢することなく、快適に暮らしていただく。

そして、そんなお客様が満足していただける家つくりを心がける。

少なくとも私は、それを基本として、お客様が家づくりに我慢することなく、

そして何よりも住んでいて気持ちが良いと言える美しい家を創るお手伝いをする。

そのような気持ちで、仕事をさせて頂きています。