- 2014.02.03
住宅は二酸化炭素を預かる銀行
古民家や現代の住宅など木造住宅を形作っている骨組みは木です。
地球温暖化防止のためには二酸化炭素の排出量を減らす必要がある
事は皆さんご存知だと思いますが、その考え方の一つとして、
カーボンニュートラルという言葉があります。
直訳するとカーボンは炭素の事で、ニュートラルは中立なので
「環境中の炭素循環量に対して中立」という意味となります。
何かを生産したり、人為的な活動を行った際に、排出される二酸化炭素と
吸収される二酸化炭素が同じ量であるという概念で
二酸化炭素は増えないという考えです。
木材は燃やすと二酸化炭素がでますが、木を燃やすときに出る
二酸化炭素は元々その木が大気中にあった二酸化炭素を自らの
材料として固定したものであり、たとえ燃やしても、
大気中にもともとあったものが戻るだけなので二酸化炭素は
排出量には計算されないのです。対して化石燃料は遙か
昔の二酸化炭素を固定したものなので、少なくともここ最近の大気に
含まれていた二酸化炭素なのではないので、燃やして出た
二酸化炭素は大気中の二酸化炭素を増やすこととなり
環境に良くないという考え方です。
地球環境のためには二酸化炭素削減に努力が必要で、
木も燃やさないほうがいいはずです。
カーボンニュートラルという言葉は何か二酸化炭素排出量の
削減の為に作られた屁理屈の概念だと感じてしまうのは私だけでしょうか。
「樹」は光合成により水と二酸化炭素を吸収し、酸素を排出します。
「樹」は建築資材として伐採された時点で「木」となります。
その段階で光合成は行われなくなり、「木」には吸収された
二酸化炭素が炭素と変化して蓄えられます。
木を形作っている成分とは炭素と水素が大量に組み合わさった、
セルロースという物質なのです。そしてもしこの「木」が燃やされれば
大気中に二酸化炭素が排出されるのです。
愛媛大農学部森林資源利用システム杉森准教授と2010年に
共同で行った研究での試算によると、例えば築60年の古民家から
出た古材の松の梁材の場合気乾状態という細胞膜に大気中では
乾燥しない若干の水を残した状態で建築材料としては
ベストなコンディションで平均含水率は15.7%、含まれる
炭素量の平均は1cm×1cm×1cmのさいころぐらいの
大きさで0.230g含まれていました。
複数のサンプルを調べて出した結論は1立米(1m×1m×1mの大きさ)
あたり230kgの炭素を含んでいると結論付けました。
木の重さは、 体積×比重(あるいは密度)で測ります。
木は産地や木目の緻密さなどによって比重も変わってきまし、
含水率によっても変化します。一般的には15%の
含水率時の比重を使い計算されます。
たとえば松という木で1立米の大きさの場合、
100(cm)×100(cm)×100(cm)= 体積は1,000,000cm3で、
比重が0.54とすると
1,000,000×0.54÷1000=540kgとなります。
540kgの重さの木材で含まれている炭素の量は重量の43%程度もあるのです。
参考までに木材の含水率15%のほぼ気乾状態の場合の比重を書いてみると、
松の比重 0.54~0.57
ケヤキには0.47~0.84で平均的には0.62ぐらい
杉 0.4ぐらい
ヒノキ 0.4ぐらい
桐 0.29となります。比重が小さい数字の方が軽い木材となります。
話を二酸化炭素の方へ戻すと、二酸化炭素削減の目安として「ブナ」の木何本分という
「ブナ」という木を使った例えがよく使われますが、「ブナ」の木が使われるのは、
「ブナ」の木が、光合成で二酸化炭素をどの程度吸収できるか
推定できるようになったからです。
「ブナ」という木は温帯域に生育する落葉樹で日本でも鹿児島から北海道まで
広く分布しています。私の住んでいる愛媛県でも西予市という所で
「市の木」として指定されているなじみのある木で大きいものは
高さ30mにも達するほどの大木にもなります。
ちなみに「ブナ」という木の名前は、あまり使い道のない木なので
「ぶんなげる」という言葉からきているという説もあるようです。
最近は研究も進んでいるようで、杉の木を使って炭素吸収量を
表示したりするのも増えています。
広葉樹である「ブナ」の木よりも針葉樹の「杉」の方が若い樹齢の時には
より多くの炭素を吸収するそうです。
この「ブナ」の木1本が1年間に吸収する大気中の二酸化炭素の
量は独立行政法人 森林総合研究所の試算数値を見ると11kgという数値になります。
ちなみにガソリンは1ℓで 約2.3㎏の二酸化炭素を排出するそうです
炭素量の測定をしていただいた愛媛大学農学部森林資源学コースの杉森准教授が
住宅のバイオマスストックの研究の為におこなった調査によると、
昭和28年建築の延べ床面積が46坪の住宅で構造材と化粧材など
使われている木材の総量は17m3程度でした。ということは1棟解体して
廃棄するとその炭素量は3.910kgになります。
炭素量がそのまま二酸化炭素になるわけでなく、炭素を二酸化炭素に
換算する計算式は、炭素量×44÷12=二酸化炭素量となります。
先ほどの46坪の住宅の場合であれば3.910kg×44÷12=14.337kgとなり、
これは「ブナ」の木1303本が一年間に吸収する二酸化炭素量になります。
古民家などの古い住宅で考えてみると、まず現在昭和25年以前に建築された
木造住宅は、総務省統計局 政策統括官の平成20年度データーによると約149万棟、
木材1立米あたりの炭素量230kg×使われている骨組みなどの
木材の平均的使用量17立米×残存数149万棟=582万tあまり、
炭素量を二酸化炭素量に換算すると、2134万tとなり、「ブナ」の
1年間の二酸化炭素吸収量でいけば、194,196万本分もの二酸化炭素が
古民家などの古い住宅などに蓄えられている事になります。
現在の住宅などすべての木造住宅で換算し、どれだけのブナの木を
植林しなければならないのかと想像すると安易に燃やす事はできないと思います。
全国地球温暖化防止活動推進センター2007年webサイトによると、
1世帯当たり1年間の二酸化炭素排出量は 約5,350㎏だそうです。
内訳は冷暖房・給湯・厨房・照明など家電製品での排出が65%にのぼります。
長期優良住宅の木のいえ整備促進事業や住宅版エコポイント制度などが、
政府の政策として大規模に予算をかけ施行されていますが、それに加えて、
できるだけ住宅そのものを長く使う意識、解体しても廃棄処分で
燃やしたりせづに再活用していく事が大切だと思います。
こうした木材が果たす役目をしっかりとご理解頂く事が大切です。