木造住宅の断熱工法は「充填断熱」か「外張断熱」が一般的

断熱工法は大きく2種類に分かれます

木造住宅の断熱工法は、大きく「充填断熱」と「外張断熱」の2つに分かれます。

鉄筋コンクリート造の住宅では外張断熱が多く採用されますが、

木造住宅において2つに優劣はありません。充填断熱でも外張断熱でも

綿密な計画のもとしっかりとした施工がされれば、住まいを冬暖かく夏涼しい

快適空間にするという目的は果たせます。

充填断熱にするか外張断熱にするかは、施工性やコスト、

さまざまな断熱材の中からどれを選ぶかにも関わり、適材適所で考えることが大切です。

壁には充填断熱を採用し、基礎や屋根には外張断熱を採用するなど、

住宅の部位によって使い分ける場合もあります。

また最近では、充填断熱をした上で外張断熱を行うという

「付加断熱」も増えてきています。

充填断熱工法

「充填断熱工法」は、柱などの構造材の間に断熱材を充填する方法で、

広く一般に用いられています。壁の内側の空間を利用するため、

支持材などで新たに断熱用のスペースをつくる必要がなく、

外張り断熱より低コストになるケースがほとんどです。

壁内の結露を生じさせないよう、防湿フィルムを貼るといった

施工が肝心になります。

グラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなどの

繊維系断熱材が充填断熱工法で使用される主な断熱材です。

熱伝導率がコンクリートの10分の1(断熱性能がコンクリートの10倍)

である木造住宅では、日本よりはるかに寒い北欧などでも

充填断熱が一般的になっています。

家を外側から断熱材で包みます

  1. 外張断熱工法ってどんなもの?

外張断熱工法

「外張断熱工法」は、柱などの構造材の外側を断熱材でくるむ方法です。

壁の中の空間を残すことで配線や配管などのダクトスペースに活用でき、

施工が簡単で結露や木材の腐朽のおそれが少ないなどのメリットがあります。

反面、断熱材の荷重で外壁が垂れ下がる恐れがあるため断熱材をあまり厚くできない、

建物の揺れに断熱材がついていけず変形しやすいなどが難点です。

硬質ウレタンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、フェノールフォームなどが

外張断熱工法で使用される主な断熱材です。鉄筋コンクリート造の住宅では、

熱しにくく冷めにくいというコンクリートの性質から、

直接外気にさらされないようすっぽりと覆ってしまう外張断熱が適しています。

家の上下から逃げる熱をシャットアウト

  1. 床・屋根の断熱方法は?

屋根・天井、床・基礎の断熱

住まいの1階の床から熱が逃げていくのを防ぐ方法としては、

「床断熱」と「基礎断熱」があります。床断熱は1階床面に断熱材を取り付ける工法で、

日本の住宅では最も多く採用されています。基礎断熱は床面ではなく基礎の外周りに

断熱材を張る工法で、寒冷地では床下空間に暖房機を入れた「床下暖房」と

組み合わせて施工されることが増えています。

屋根・天井の断熱は夏の暑さ対策として有効です。方法としては、

天井材の上に断熱材を敷き詰める「天井断熱」、垂木の上や間に断熱材を入れる

「屋根断熱」などが一般的です。

天井断熱は比較的低コストででき、効果を実感しやすいためリフォームにも向いています。

高機能なガラスで暑さ寒さをシャットアウト

  1. 窓の断熱方法は?

窓断熱の一例

住まいの断熱を考える上での大きなウィークポイントとなるのが窓などの開口部です。

壁や屋根に比べて断熱性は低く、夏場の熱の流入も、冬場の熱の流出も、

住宅全体で窓は高い割合を占めています。その対策のため、

日射熱を遮蔽・反射・吸収できる高機能なガラスも増えてきており、

気密性の高いサッシと組み合わせて使うのが理想的です。

近年普及が進んでいる「Low-E複層ガラス」は特殊な金属膜をコーティングした

ガラスを2枚組み合わせたものですが、室外側ガラスをコーティング処理することで

遮熱効果を持たせた遮蔽タイプと、室内側ガラスをコーティング処理することで

断熱効果を持たせた断熱タイプがあります。これにより、西日がきつい部屋の窓は

遮熱タイプにし、寒さが厳しい北向きの部屋は断熱タイプとするなど使い分けができます。

熱や炎に強く、経年劣化しないのが繊維系です

  1. 繊維系は発泡プラスチック系より性能が低い?

熱の伝わりやすさを示す熱伝導率は一般に発泡プラスチック系の方が低いことから、

その数値だけ見ると発泡プラスチック系が繊維系よりも熱を遮る力が高く、

断熱材として優れているように見えます。

しかし、断熱性能は断熱材の厚みとも関係するため、一概に比較はできません。

断熱性能以外に目を移すと、グラスウールなどの繊維系は熱や炎に強く、

万一の火災でも家族と住まいを守るここができる、高温多湿な環境でも

性能が落ちにくく住宅を長寿命化に役立つなど、発泡プラスチック系にはない

大きなメリットがあります。