カビの胞子は空中を浮遊し、それを吸入することによって気管支ぜんそくや

アトピー性皮膚炎などアレル ギー性疾患を引き起こす原因となります。

どのようなカビの胞子がアレルゲンとして重要であるかというと、

カンジダ(人の皮膚や消化管に常在して いる酵母菌)やアスペルギルス、

ペニシリウム、アルタナリア、クラドスボリウムなどが挙げられます。

アスペルギルスはコウジカビの一群で、昔から醸造(日本酒、味噌、醤油)

に利用されています。

また、 いろいろな器物を汚染し、食品の変質・変敗の原因となる有害な種類が多い。

ペニシリウムはアオカビの一群で、抗生物質ペニシリン生産菌で有名です。

アルテナリアはススカビと呼ばれる黒色カビの一種で、室内では塗装面、

ビニールクロスに見られ、クー ラー内部のプラスチック面にも発生します。

クラドスポリウムはクロワカビと呼ばれるカビの1種で住宅の内外に黒色の汚染物を

認めたら、それはほとんどクラドスポリウムと考えてよいでしょう。

このうち、アルテナリア、クラドスポリウムは家庭内でとくに湿度の高くなる浴室、

洗面所、台所などに 繁殖する黒色の力ビ(好湿カビ)です。一方、アスペルギルス、

ペニシリウムは居間や寝室の室内塵に多量 に含まれているカビ(好乾カビ)で、

室内に浮遊するため、影響も大きいものがあります。さらに興味深いの は室内塵中の

主要なアレルゲンであるダニ類(ヤケヒョウヒダニ・コナヒョウヒダニ)が

よく繁殖する温・ 湿度条件20~25℃、75%と好乾カビの発育条件が一致することです。

室内塵中のカビ数の季節変動は、3月と8月にピークを示すデーターが出ています。

これを 室内での温・湿度の変化に関連づけると3月の場合は、真冬(12~2月)の

暖房による結露の発生がもたらしたカビが1~3カ月後になって

最高数に達したものと考えられます。

一方8月の場合は6~7月に戸外の気温・降水量が引き金となって発生したカビが

8月に入って頂点に達 したものでカビの分布は欧米先進国のデーターと全く同じであり、

日本人の日常生活が室内環境においても 欧米化していると言えます。

しかし、わが国の気候は高温多湿で、欧米と異なります。室内からカビの繁殖する条件を減らすよう、

日常生活での清掃、除湿に努めましょう。