五重塔は幾度も修復されていますが、

柱や梁、桁など肝心なところは

すべて創建当時のヒノキであり、

どれも樹齢1000年以上のもの。

それが1300年以上経っても朽ちることがありません。

修復に携わった名棟梁の故西岡常一さんによれば、

その表面をカンナで削ると、

ヒノキ独特の香りを放ったといいます。

ヒノキは1300年経っても生きている。

ここにヒノキならではの半永久的と

いえる強靱さの秘密があります。

実験によると、ヒノキの曲げ、圧縮などの強さは、

伐られてから200年ほどの間に

だんだん強くなって最大30%も強度が増し、

1000年ぐらい経って新材と同じ強度に戻ります。

つまり、育った年月の倍の年数は、

その強度を保ち続けることができる木なのです。

日本のヒノキは、植えられてから

ほぼ60年を経た時期に伐採され建材になります。

法隆寺とはいかないまでも、

世代を超えて100年以上は確実に持つ家が、

このヒノキを使えば建てられるのです。

現在の住宅には「日本住宅性能評価基準」

が定められています。

どれくらい長持ちするか「劣化の軽減」についての等級で、

ヒノキは75年から90年も持つことが

認められている一番高いグレードの等級3を得ています。

末長く住み続けられる家は

ヒノキでつくるべきであることを、

法隆寺の五重塔は私たちに教えてくれるのです。